個展の話(2)「体験する展示」と舞城王太郎『煙か土か食い物』について
写真とはなんだろうと定義しようとすると、色々とご意見が出るかと思います。人によってはそれは記録だろうし、人によってはアートである可能性もある。メディアの性質から考えると、そのグラデーションは千差万別で、答えはおそらく、それこそ闇の中ということになりそうです。
ただ、一つだけ、もし写真の中で一番大事な要素は何かと問われれば、「光」という答えはある程度の人が合意できるポイントかもしれません。もちろん他にもいろいろな合意の形成できるポイントはあるのでしょうが、光がなかったら写真はそもそも存在し得ないし、もっというならば、写真が強く依存している人間の五感の一つである「視覚」は、光が存在しない場所では感覚そのものが機能しません。
もっというならば、世界に光がなかったら、熱も生まれなければ、酸素も、有機化合物も、この地球に満ちる生物たちも生まれなかったのでしょう。聖書における神の最初の発声が「光あれ」なのも理解ができます。光がなければ写真も、生物も、人間も、この世界も存在し得なかった。光はこの世界の根源だし、写真とは、その世界の根源である「光」を、小さなカメラという機械の中に一瞬だけでも閉じ込めて、その姿を止める行為であるというふうにいうことができます。なので、「光」。この展示の最大のテーマでもあります。