Nikon Z6IIIに見る「カメラの未来」の一つの方向性

機材のことは書かないって確かこのレターの最初の方に書いた気がしますが、まあ、そう言う気分の時もあるので、今日は新しいニコンのカメラZ6IIIについて書こうかなと。レビューではなく、このカメラが2024年における存在の意味を考えてみました。
別所隆弘 2024.06.23
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シャッターを切った時、手元に僅かにくる柔らかいメカの振動を久しぶりに感じた瞬間、「ああ、こうだったね」と思い出しました。今やカメラは積層センサーとメカシャッターレスに大きく舵を切るその移行期になると思いますが、かつてのカメラはミラーショックやメカショックのような、機械が動くことに伴う振動がカメラを伝って手に伝わってくるものだったんです。ライカを使っている時はもちろんまだメカが動いているのですが、メインカメラをZ8にして移行、振動のないカメラに慣れていたので、久しぶりの感触に少し嬉しくなりました。嬉しくなって、そして、なんというかこの感触に対して、面白いことに「カメラの未来」を少し見た気がします。懐かしい感触なのに、それがカメラの未来につながる。ある意味矛盾ですが、その感覚の源泉はどこにあるのでしょう。

今日の写真は全てNikon Z6IIIの撮って出しです

今日の写真は全てNikon Z6IIIの撮って出しです

Z6IIIには今回ニコン初の機能が一つ搭載されています。発表以降、部分積層センサーや、新しいEVFなど、派手な部分での話題が先行しているのですが、実は個人的に一番面白く、そして実際に発売された後には長くZ6IIIを支える機能になると思っているのが、フレキシブルカラーピクチャーコントロールという機能です。先行する類似の機能としてはパナソニックのリアルタイムLUTがありますし、そもそもフジもフィルムシミュレーションでWBとは違う個性的な色を表現する機能をずいぶん昔から載せていましたが、ニコンの今回のこのフレキシブルカラーの機能は、伝統的に忠実な自然の色を再現することに重きを置いてきたニコンのカメラとしては、一大転換だと思っています。そして僕が興味を惹かれるのは、そのような転換がどこからきたのかということなんです。

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